仕事帰りに横切る都内の大きな公園には、いま春の花々が咲き乱れていて大層美しいことであるが、おれには草花の知識が決定的に欠けているため、どの花を見ても「大層美しいこの子たち」としか認識できず、自分という人間の愚かさに絶望、もはや残された道は出家しかござらぬ…という気持ちで、日々すごすご帰途に就く。しかしながら、実を言えばいまの状態はちょう贅沢なんじゃないか、花として顕現した「存在」そのものとでもいうべき或る何かに、名前を知らぬということによって精神が直接に接続されているんじゃないか、マジですかじゃあベリークールなんちゃうん、おれって?覗いちまったね、永遠の向こう側を…という宇宙的解釈に先ほど唐突に思い至り、目下、平穏な心で夕食のたぬきうどんの事などに、ワシは思いを馳せておるよ。