いかなる困難も正面突破してみせる稀有の生命力が子供の時から炸裂中の友人は、先ず否定的言辞で防衛線を張ってからでないと生の世界に触れられないおれに向かって「貴殿はその消極的な物言いを控えるがよかろう。いかな口先だけの言葉とはいえ、反復すればやがて己の心を縛り、万事消極的な精神が形成される仕儀と相成る」と事あるごとに諄々と諭し、こいつマンガしか読まねえ野人のくせになんで中村天風とほとんど同じことをごく自然かつ体得的に語ってんの、とびびりつつも「いやそれ暴力だから。ポジティブの強制は生命力の枯渇時には痛みとなるから。その不見識をぼくは糾弾してやりますよ。あほですか君は」などと冴えない反論をおれが繰り返す、そんな、うつくしい放課後の風景。

どちらかが正しくてどちらかが間違ってた、と結論づけるのは簡単だし、おれは防御重視のスタイルはもう性分なんだと思ってるけど、それでもやつの言ってたことを、いまならもう少し落ち着いて聴いてやれるのではないか。